INTERVIEW

「変化を起こし、今の文化風土のまま成長する」── Backpackers’ Japan 新経営陣インタビュー

2010年2月、当時24歳の若者4人で創業したBackpackers’ Japan。それから12年の時を経て、4軒の宿泊施設、キャンプ場とロースタリー、70名のスタッフ、2つの子会社を擁する会社組織へと成長しました。

2020年には代表を交代。時を同じくして始まった世界的なパンデミックの影響はいまもまだ旅行業・宿泊業に大きなダメージを与えています。そんな中、Backpackers’ Japanは今年新たに役員2名を採用し、新たな経営体制に移ります。

役員増員にはどんな背景があったのか。会社の風土として存在する「自由と自立」「自分の言葉で話す」とは。そしてその文化の源流はいったいどこにあるのか。新役員2名を交えたBackpackers’ Japanの役員5名にお話を聞きました。

Backpackers’ Japan
2010年創業。東京と京都で計4軒のゲストハウス、ホステルを運営する。いずれの施設でも、空間内装や商品にこだわった飲食ラウンジを併設させているのが特徴。2021年には焙煎事業を、2022年にはスタッフ発案の事業としてキャンプ場、またブルワリーをオープンさせる

代表取締役CEO・藤城昌人(写真左)
2014年入社。店舗マネージャーやCOOを経たのち、2020年に前代表・本間貴裕から代表取締役を引き継ぐ形で代表取締役CEOに就任。それまでの役職だったCOOもそのまま兼任し、店舗運営及び業務執行の責任者であると同時に経営判断を行う。BJ(Backpackers' Japanの略称)内ではスタッフを含めほとんどのメンバーから、愛称の「あいちゃん」と呼ばれる

取締役CBO・石崎嵩人(写真中央)
創業メンバー。創業時より取締役として予約導線設計や広報戦略を担当。2022年にCBOへと肩書きを変更し、会社のコーポレートアイデンティティ設計やブランド構築、事業ごとのコンセプト策定やクリエイティブディレクションを行う

取締役CFO・桐村琢也(写真右)
創業メンバー。創業時より社内のファイナンスを担当。バックオフィスを含めた全ての財務管理、事業ごとのフィージビリティスタディを行うほか、店舗スタッフに向けてプロジェクトの目標設定サポートを行ったり、希望者を募っての勉強会を定期的に開催する

2022年4月、上記3名で構成されていた経営陣に、新たに2名の役員が就任した

(企画:なかごみ / 取材・編集:くいしん / 撮影:竹之内康平

新規事業とホステル運営をどちらもを固めるために

 

—— 今回、Backpackers' Japanの経営陣に新たに2名が就任されたとのことですが、まずはそのあたりの背景からお聞きしてもよろしいでしょうか。

藤城:背景の大元には僕のCEOとCOOの兼任状態があります。2020年に前代表の本間貴裕から代表取締役CEOを引き継いだのですが、それまでやっていたCOO、つまり業務執行の責任者的立場も継続していました。代表交代時、本間から引き継いだ具体的な職務がほぼなかったこともあり、掛け持ちでもやれるなと思っていたのですが、同時に、いつかは誰かにCOOを任せるタイミングがくるだろうなとも思っていました。

石崎:2020年にロースタリー事業とキャンプ事業を発足させたのですが、新規事業の立ち上げを行いながら既存のホステル運営も見ていかなければいけない。コロナ禍で売上は落ち込んでいるし、スタッフもストレスや不安を抱えてる。インバウンドの回復まで既存店を支え、今後の店舗展開も考えたい……など考えるうちに「このままだとそのうち手が回らなくなりそうだな」という感覚が徐々に強くなっていきました。その感触は他のふたりも一緒で。

桐村:当時は宿泊がいつ回復するかまったくわからかったので新規事業の計画は必然だったし、今回のような社会的に大きな事態が再び起こったとき、複数分野の事業が成り立っていて、どちらかが落ち込んでいたら支え合う、どちらもいいときは相乗していける。それが理想だと思いました。なので宿泊事業も新規事業もしっかり固めたくて。

石崎:そのためには、単純に人手も頭数も足りないというか、このままだと新規事業も既存事業も片手落ちになっちゃいそうだという懸念がありました。去年の段階で、ロースタリーとキャンプ場以外にも新規事業案が出ていたしね。

藤城:そうね。それで、2021年の夏くらいに「そろそろCOOを入れるのを考えていいかもしれない」と発案し、本格的に探し始めました。

理想の人物として挙げていたふたりの思わぬ参画

—— では新役員のおふたりに自己紹介とこれから担うお仕事をお聞きしてもよいでしょうか。

塚崎淳司(写真左)
1981年生まれ。大学卒業後、アート印刷株式会社に入社し、法人営業職として10年間勤務。2014年より、自転車メーカーの株式会社トーキョーバイクにて法人営業に従事。2016年より、同社取締役として経営に参画。2020年、山梨県北杜市に移住。2022年4月1日より、株式会社トーキョーバイクの取締役を兼務しながら、株式会社 Backpackers’ Japan の取締役COOに就任

塩満直弘(写真右)
1984年生まれ。2013年に「萩ゲストハウスruco」を開業。2019年、株式会社haseを創業し、2020年8月には、JR西日本との共同プロジェクトとして、山口県下関市山陰本線沿いの阿川駅をリユースし、小さなまちのkiosk「Agawa」をオープン。2022年4月1日より株式会社haseの代表を兼務しながら、株式会社 Backpackers’ Japan の取締役CCOに就任

塚崎:よろしくお願いします、塚崎です。仕事内容は、現在あいちゃん(藤城)がしているCOO業務を少しずつ引き継ぐ形ですね。具体的には、経営方針の戦略化、既存店を中心とした業務の効率化や売上の最大化に対する意見入れ、各コーチやスタッフのサポート、制度設計。また、これまでに培ったスキルを活かして卸や営業でも力を発揮できればと思っています。

塩満:塩満です。塚崎さんが社内を見る一方で、僕の役割は社外に目を向けて、BJの考えていることや熱量を社外に伝えていくことです。新規事業や店舗展開でいままで関わりのない地域に出店したり、仕事相手や取引先が増えていくと思うんですが、そこで先頭に立っていい関係をつくっていく。肩書きとしてはCCO(Chief Communication Officer)となります。

藤城:塩くん(塩満)にはこれまでの経験を生かして、都市圏以外での事業構築のサポートやホステルの新規開発にも協力してもらいたいと考えています。

—— 今回の採用に際して、おふたりはどのように声を掛けられたのでしょうか。

塚崎:はじめは、あいちゃんから「今度いつ東京に来ますか? 仕事のことで相談したいんですが」と連絡が来て。僕はもともと、ひとりのユーザーとしてBJの宿を利用したり、会社の人たちと話していたのですが、あいちゃんとは一度もゆっくり話したことはなかったんです。ただ、あいちゃんが役員になったのと僕がトーキョーバイクの取締役になったのが同時期だったこともあり、一度じっくり話したいと思っていました。

—— と、思って話してみたら、まさかの役員へのオファーだった……?

塚崎:僕はまさか役員に誘われるとは思ってもみなかったので、あいちゃんが役員を探している話をし始めてからもしばらくは、「なるほどね、誰かいい人いるかなあ」と思って話を聞いていました。そしたら突然「あの、ダメ元なんですけど……塚崎さん、やってくれませんか」って。一切予期してないことを人から言われると、一瞬思考が止まりますね。

一同:(笑)。

藤城:あのときは急にすみません(笑)。そして後日、塚崎さんから「ぜひ一緒にやれる形を探したい」と連絡があって、2週間後くらいに再度打ち合わせをし、いっしー(石崎)と琢也(桐村)を入れて詳細を詰めていきました。

塚崎:実は話をもらった当日のうちから、最後に話し終わって別れる頃には「やりたいかもしれない」って気持ちが湧いていました。その翌日も、一週間経っても変わらずに一緒にやりたいと思えたので、あとは具体的になにをするか、どのように関わるかによるな、と。

—— 塩満さんはどのように誘われたのでしょうか。

塩満:それが、塚崎さんと話が一緒すぎて……。たぶん、誘われたときの驚きとかリアクションも一緒だと思うし、その日のうちにやりたいと思ったのも一緒です。

—— 役員の採用としてはスムーズすぎるようにも思えますが、ふたりとも頷いてくれる確証が藤城さんにはもともとあったのでしょうか?

藤城:いえ、むしろその真逆で、ふたりとも、入ってくれる可能性はほぼゼロだと思っていました。塚崎さんはトーキョーバイクの取締役として尽力しているのを知ってるし、塩満くんは山口県で自分で会社をやっている。そもそもこのふたりは、スカウト系のエージェントに頼んだり、知人の紹介で人に会ったりするなかで、ひとつの判断基準というか、「COOとして採用するならこういう人だよね」と、理想の人物像として挙げていただけだったんです。

塩満:その時点でうれしいよねえ。

藤城:けど、その方法だと、お互いにぴったりフィットして「この人と働きたい」と思える人にはなかなか出会えなくて。なので、一度塚崎さんと塩満くんに本当にダメ元で声を掛けてみよう、という話になりました。

石崎:同じタイミングで声を掛けてたのも、まさかふたりともがOKしてくれるとはほんとうに微塵も思ってなかったからだよね。

藤城:そう。でもこんなチャンス二度とないと思って、ふたりから前向きな返事をもらった時点で僕は絶対にふたりとも迎えたいと思っていました。それぞれ違った形で会社にいい影響を与えてくれるのは間違いないし、ふたりともとにかく人柄が魅力的。あとは、得意分野も性格も積んできたキャリアも違うので、それを実務面にどう反映させて役割をつくるか、ということを話していきました。

「自分ごと」がきれいな海をつくる?

—— 新役員のふたりに質問なのですが、おふたりはこの会社の未来をどう捉え、どのようなことをしていきたいのでしょうか。

塚崎:僕自身がいま「こんなことをやっていきたい!」と考えているというよりは、先日このメンバーでディスカッションした「この先の5年、10年でどういったことをやっていくか」をさらにブラッシュアップしたり、現実に落とし込んでいくことをまず第一にやっていきたいです。

藤城:既存事業と新規事業の話だけでなく、今後変わっていくであろう旅の概念や人々の生き方にもアプローチしたい、という話もしましたね。

塚崎:そう、なのでとても広がりのある話だと思って。そこに対して素直にワクワクしています。それから、いまBJはだいたい70人くらいで、まだぎゅっとひとつになれる規模だと思っています。これから事業が増えたり店舗展開をしたりすると、100人、200人の規模になるかもしれない。けれど、いまの状態でしっかりと制度や文化を固めれば、たとえ200人になっても揺るがないものになるなと。

—— 会社として世の中にどんなアクションをするかだけでなく、組織の進化に対してもしっかり関わっていくイメージですね。

塚崎:そうですね。COOとして働くのは初めてなのですが、僕はずっと黒子の人生で、25年くらい続けていたバスケでもエースプレーヤーを輝かせるためのプレーをしていました。トーキョーバイクの経営陣のなかでも同様です。なので、主役である店舗のメンバーをいかに支えるかとか、80%しか力を出せていない人をどう100%にするかとか、100%の人に対して次はどうスキルアップできるかとか、そういったことを考えて価値の総量を上げたいです。そのタイプのCOOになら、僕はなれるなと。

—— 塩満さんはいかがでしょう。

塩満:自分は10年間、山口という土地で戦ってきた経験があるので、特にローカルでの拠点づくりに関しては自分の力が活かせると思います。あとは、僕自身、友人として昔からこの会社が大好きなので、その熱量を伝えてファンを増やしていくこともどんどんやっていきたいですね。それから……。

—— それから......?

塩満:たとえば、働いてる方も、来られる方も、いかなるときも便器を拭きたくなるとか、そんな会社になればいいなと思います。僕自身「好きだなあ!」って感じるお店とか、本当に大切に思える人がやっているお店って、便器拭きたくなっちゃうんですよ。便器を拭きたくなったり、ちゃんと便座を下ろしたり、落ちているちり紙を拾ったり……。

一同:(笑)。

塩満:それって、自分ごととしてそこに属してるって感覚だと思うんですよね。そんな感覚を抱いてもらえるような関わりをつくりたい。もちろん強制はしたくないけど、自分にとっては、すでにそれくらい大切な会社です。

塚崎:なるほど、そういうことだね。

塩満:たとえば、海に吸いがらやゴミが捨ててあるのは、あれも究極は自分ごとじゃないから起きていると思ってて、極端な話、従来の社会がつくり上げた没個性化の影響でもあると思います。働く人の個性や「その人がそこにいること」を求めてこの会社が育ち、広がっていけば、もしかしたらあの海もきれいになるかもしれない。そんな景色をこの会社を通じて見てみたいと思っています。

「利他性」「自由」「向き合う」……世界観を形成する文化の源流とは

—— 今の話、僕は強く共感して聞いていたんですけど、BJの魅力と言いますかすごさといいますか、世界観とか空気感みたいな言葉でもいいのですが。この会社にはそれを感じさせる「なにか」があるってことですよね。それがつくるお店にも、組織にも現れている。これをあえて言葉にするとしたら、どういったものなんだと思いますか?

塩満:僕は、一言で言うと「利他性」なのかなって。ふつう、一般的な経営者がなにか事業をするならまず考えるのが「それってお金になるの?」ってことだと思います。もちろんわかるけど、大事なのはそこじゃないよな、と。けど、この会社のメンバーは、社会なり人なり、なにかしらのよい循環に寄与したいと純度高く思っているように感じます。

塚崎:今の塩くんの話とまた別の観点なんですが、いち利用者として、この6〜7年くらいBJの施設や人を見てきたファンの目線から言うと、「自由」と「自立」の二言が思い浮かびます。

—— 「自由」と「自立」。

塚崎:働いているスタッフたちは自分よりも少し年下になるわけですが、素直に憧れたり尊敬できたりする理由はその言葉に集約されるのかなと。世の中にあるルールよりも、自分たちの意思で決めて、行動してるんだろうなってことがすごく伝わる。スタッフの方と話していても、ちゃんと一対一で、その人自身として僕と話してくれてるって実感があります。言葉にすると当たり前に聞こえるかもしれないけど。

—— でもそれって、当たり前のあり方ではないですよね。特に、いわゆる接客業では。

塚崎:たとえば何十年もやっている居酒屋さんで、大将と女将さんの気概がよくて自然と心が通じ合う、ならまだわかる。でも、これだけの人が働いて、店舗も複数あるなかで、自分で決めて動いたり、その人個人として話してるんだってことを多くの人から感じるのは奇跡的だなと思っています。だから、はっきりと言葉にできない感覚とか空気感のようなものが魅力なのかなと。

—— 同じ質問を藤城さんたち3人にも聞いていいでしょうか。

桐村:塚崎さんが言葉にできないものと言った直後になんなんですが、ここにいる人たちの働き方について、あえて一言で伝えると、「向き合う」ってことなのかなと僕は思います。

—— 向き合う。

桐村:はい、誤魔化したり見過ごしたりせず「向き合う」。ちょっとしたトラブルとかクレームとか、様々な人への対応についても、効率を重視してすぐに全体最適したりせず、向き合う。接客に限った話ではなく、社内の制度設計するチームも、細かく一つひとつ説明したり、しっかり一人ひとり意見を聞いたりします。いつの間にか文化としても定着してるよね。

石崎:納得するなあ。BJって見た目はどうかわからないけど、あんまりイケイケのチームじゃないと思うんですよね。イケイケつよつよじゃない。どっちかっていうとすごく真面目。「向き合う」とか「人のことけなさない」とか「ちゃんと落ち込む」とか。僕はそれが美徳だと思う。

—— でも、なかなか自然にそうはならないですよね。人が増えると特に。けど、BJのみんなはすごく誠実に、自然と仕事に向き合っているように見えます。

藤城:僕はいままでBJが積み上げてきた歴史も理由のひとつだと思います。創業したころは運営メンバー4人が全員経営者だから、当然自分ごと化してなんでも仕事をやっていく。それを近くで見てきたスタッフがいて、そのやり方が脈々と伝わっていると感じます。

桐村:そうだね。そして仕組みでいうと、接客のマニュアルも意図的につくっていないっていうのもあるかも。言われたことをただやるよりも、主体的に働いて欲しいというのもあるけど、マニュアルってやっぱり、人と出会う上で不自然だし。

石崎:うん。だから、この会社で働いている人たちはけっこう自然と、自分の言葉で話してる。そしてそれがとても好き。僕はこれが塚崎さんの言っていた自由や自立にも繋がるのかなと思います。自由と自立を分解した一番最小のアクションとして「自分の言葉で話す」がある、というか。

—— はい、はい。自分の普段使っている、その人らしい言葉で話す。

石崎:たとえば僕が朝、お店に行くとレセプションでいろんな声をかけられる。「おはようございまーす」だったり「あっ!いっしーさん!」だったり「今日は最ッ高の天気ですね〜」だったり「眼鏡めちゃ曇ってますけど大丈夫ですか」だったり。僕が会社の一員だからってだけではなくて、宿泊者への接し方でもこういったことが起こっている。「こんな人が来たらこう話す」ではなくて、あくまでもそのとき、その人とその場で起こる交感を大事にする。

—— そうさせているのは、やはり会社の歴史や文化ですか。

石崎:僕の感覚では、会社の歴史や文化よりもっと先に、旅先での感覚とか、ゲストハウスの文化自体が下地にあると思っています。出会う旅人とも、宿のオーナーとも、人と人、個々人として話す。そこに上下は存在しない。バックパッカーのカルチャーと言えるのかもしれません。

—— なるほど! つまり、みなさんが社内のメンバーや訪れてくれる人たちとつくりたい関係性はバックパッカーカルチャーそのものということ……?

藤城:そうかもしれません。純粋に僕たちがそれを居心地いいと感じているし、周りにも同じ空気感を共有している人が多くいると感じます。たとえば「お客様」も使わなければ「いらっしゃいませ」も不自然だと思って使わない。けれど、僕たちのお店を訪れる人もかえってそれを心地いいと感じてくれている。

未来を描き、今の感触のまま成長する

—— ここまで会社の文化の源流について聞いてきましたが、逆に組織のあり方としての理想像みたいなものはあるのでしょうか。

藤城:僕は「スタッフが楽しそうに働いてますね、ここは」と言われるのが一番うれしいです。「すごいですね」「おしゃれですね」って言われることよりも。なので、それを続けたいなと。

石崎:うん、わかる。自由と自立の話もあったけど、「各々自由な感じ」とか「みんな自立してる」とか「楽しそう」な感触のまま、会社として大きくなっていければそれが一番いいよね。おそらく、成長や拡大とはふつう相反するものだし。

桐村:むしろそれを実現するために役員を増やそうと思った、ということでもある。

藤城:そうだよね。塚崎さんが中を固めて、塩くんが会社の魅力を外に伝えていく。だからこそ会社としては今の形のまま、やれることが増えていく。

石崎:経営陣の役割って、まさに、未来に焦点を置くことだと最近よく思うんだよね。組織の未来形を考えるのはもちろん、我々の会社があることで、どんなふうに自分たちの周りや、社会がよくなるかを見定めて方針をつくっていくことだなって。

—— それをこれから新しい経営体制で考えて、実装していくわけですね。

石崎:役員増員についてはもちろん最初に述べたように人手が必要だったって側面はあるんですが、BJがどんな会社で、どんなことができる可能性があるのかを一緒に考える人を増やしたいという気持ちも同じくらい強くありました。なので僕はこれから、ふたりと一緒にこの会社について話していけるのがとても楽しみです。

藤城:僕は代表取締役CEOの肩書きを持っていますけど、トップとしてみんなを引っ張っていくのはそんなに向いていないと思ってます。けど、自分たちのつくる事業が必要な誰かに届いている実感はすごくある。それをなるべく広げたいと思ったときに、自らアクションをするだけでなく、変化を起こしてくれる人やおもしろがってくれる人を迎え入れてもいいんだ、と今は考えています。役員人事も、スタッフ一人ひとりについても、同様ですね。

桐村:同時に、未来を描いたり変化を起こすだけでなく、今後はより事業性を意識したいと思います。会社が続かなければすべて絵に描いた餅になってしまうし、いままで会社を続けて来れたのは、実力以上に運の部分も非常に大きいと思っています。ここで再度気持ちを引き締め、事業性と理想の両輪で会社をやっていきたいと僕は考えていますね。

塚崎:自分はまだ入ったばかりなので、なによりもまずは各店舗とそこで働く人たちと一人ひとり会うところから始め、できることを徐々に増やしていきたいと思います。

塩満:どこの会社やチームにも色はあると思うんですが、BJは当時24歳くらいのメンバーで始まったからこその情熱と関係性、そして十数年ぶんのエネルギーというかうねりがあると思います。自分もそれに救われてきたからこそ、見えるものがある。それを信じて進みたいです。

(おまけ)

—— 新役員のおふたりはもともと面識がなく、今年の2月が初対面だったとお聞きしたのですが、せっかくなので、最後に、ふたりのお互いの印象をお聞きしてもよろしいでしょうか。

塩満:塚崎さんと会ったときは、安心だし、うれしかったですね。だって一度見たら......やばいじゃないですか。わかりますよね、塚崎さんのやばさ。

石崎:どういうこと(笑)

塚崎:塩満くんのことは、ウェブで取り上げられた記事を事前に見ていたのですが、その写真を見るぶんにはもっと冷たいというか……クールな人だと思ってました。こんなぐにゃんぐにゃんな人だとは思わなかった(笑)

塩満:あと塚崎さんのことで印象に残ってるのは、合宿で最初に行った自己紹介プレゼンに書かれてた……「ロマンとそろばん」?

塚崎:「ロジカル&ロマンティック」ね。

桐村:印象に残ってないやん。

石崎:経営合宿は元の役員と新役員の5名がはじめて顔を合わせる場所だったので、自分はどんな人間なのかとか、いま大事にしていることとか、将来会社でやりたいことを伝え合うプレゼンテーションを最初に行ったんです。塚崎さんのプレゼンのなかで「自分が大切にしていること」として挙げたものが「ロジカル&ロマンティック」だった、という話です。

塩満:その言葉がすごく響いていて。まさにそれを大切にしている人なんだなということがすぐにわかりました。僕はどちらかというとロマンだけで突っ走ってきたタイプなので、戦略的に、複合的に、自分にはない視点で言葉を投げかけてくれる人だと感じました。けど同時にロマンの文脈も共感できる人だと思えて、同じタイミングで入る役員として、それがうれしかったですね。

藤城:最初の「安心だし、うれしかった」はそういう意味ね。信頼できると一目でわかった、という。

塩満:うん、信頼できるし、この人に関われるのがうれしいと感じました。BJ自体にも、今の役員3人にもその感触はそもそもあったので。彼らがやってきたこと、つくってきたものに、感謝や尊敬の気持ちを持っている人は全国にたくさんいて、そのうちの一人が僕です。そんな人と一緒に仕事ができるのがうれしい。その気持ちをすぐに塚崎さんにも重ねることができた。それが第一印象です。

塚崎:僕の塩くんへの第一印象は、「愛が溢れてる人」という印象に加えて、「仕切りをつくらない人」だなと。オープンマインドって言ったらいいのかな。あんまりこれまでの人生でも会ったことないくらいにオープンな人。けど、それが八方美人なわけではなくて、愛の総量がめちゃめちゃあるんだろうなと感じます。

藤城:うん、わかるなあ。

塚崎:僕がさっき「ロジカル&ロマンティック」と言っていたのは、自分は理屈っぽいところがあって、それがウィークポイントでもあるなと感じてるんです。なのでロマンティックな部分も大切にしたい、という意味での「自分が大切にしていること」なんですよね。その点塩くんはロマンティックが図抜けているから。

塩満:いや、逆に僕はロジカルさをもっと意識しなきゃいけないなと感じてますよ。

—— 結果、ふたりはいいバランスなのかもしれませんね。おふたりの加入したBackpackers’ Japanの今後が楽しみです。では、本日は本当にありがとうございました。