海外にいるかのようなオープンで穏やかな空気感。和気あいあいと楽しそうに働くスタッフ。そこに上下関係はなく、それぞれがフラットな関係性で、何をやるか、どうやるかを話し合いながら運営しているという。
他の宿泊・飲食業と比べても独特な文化の源泉はどこにあるのだろうか。Backpackers’ Japanで働くスタッフ一人ひとりに焦点をあてたインタビュー集 "Each Perspective"。
今回は、東京・森下のブリュワリー&ビアバー「BEER VISTA BREWERY」のホールとして働く醍醐さん、ブルワー&ホールとして働く杉本さんに話を伺います。
醍醐伸岳 | Nobutaka Daigo
1993年生まれ。千葉県出身。
普段は会社員として企業のEC事業やデジタルマーケティングの支援に従事。2023年4月にBackpackers' Japanに入社し、BEER VISTA BREWERYでホールスタッフを務めている。杉本大起 | Daiki Sugimoto
2001年東京生まれ。カフェレストランのストアマネージャー兼ブルワーを経て、2024年10月にBackpackers' Japanへ入社。現在はBEER VISTA BREWERYでアシスタントブルワーとホールを兼任。また、蔵前のカフェ「AU」ではバリスタとしても勤務。
お客さんからスタッフへ、誘われて飛び込んだVISTA
—— まずは、簡単に自己紹介をお願いします。
醍醐:醍醐伸岳です。BJ(Backpackers’ Japanの略称)には2023年4月に入社して、3年と少し在籍しています。ホールスタッフとしてビアバーに来店したお客さんにサービスをするのが仕事です。
杉本:杉本大起です。BJに入社したのは2024年10月なので、在籍は1年8か月くらいですかね。ブルワー兼ホールスタッフとして働いています。今はちょうどブルワーとしての研修中なので、そちらに比重を置き、ビールの仕込みやボトリングなどを事業責任者の古さん(BEER VISTA BREWERY事業責任者兼ヘッドブルワー、古里大輔の愛称)と一緒にやっています。週末をメインにホールシフトにも入っています。

—— 醍醐さんはダブルワークと伺いました。
醍醐:そうなんです。普段は会社員として別の会社で働いていて、週末や平日の仕事終わりに週1回くらいのペースでVISTAで働いています。本業は、もともとECサイトのシステム開発をやっていた会社で、その中で得たノウハウをもとにコンサルティング業も展開しています。プログラマーとして入社して、今はマーケターとして働いています。
—— おふたりは、どのような経緯で入社したんですか?
醍醐:僕は、古さんに誘われたのがきっかけです。もともと音楽が好きで、Nui.にライブを観に行ったりCITANのDJイベントに行ったりしていたので、BJのことは知っていたんです。VISTAにもプレオープンから遊びに行っていて、良いお店だなと思って通っていました。そしたらある日、 古さんと飲んでいるときに、「働かない?」と普段の会話の延長で誘ってもらいました。

—— 会社員としてフルタイムで働きながら、飲食の仕事をすることへの不安はなかったですか?
醍醐:両立できるのかという不安はありました。本業の方は勤務地や勤務時間帯が決まっていないフルリモートで融通が利くこともあり、調整しつつであれば働けるなと思って、やってみることにしました。
—— 実際に働いてみてどうですか? 飲みに来ているのと働くのでは、印象が違う部分もありそうですが。
醍醐:実際に働いてみて、楽しいという気持ちが1番ですね。本業は企業を相手に仕事をしているのに対して、VISTAはお客さんとの対面でのコミュニケーションなので、自分にとってはリフレッシュになっているなと感じます。また、本業でお酒のインポーターの仕事もしているので、その知識をVISTAに活かす事ができています。相互に良い影響があって、自分にとっては楽しくてリフレッシュできて、かつ学びもあるような感じです。
—— 2つの仕事をしっかり活かし合っているのがすごく良いですね!杉本さんはどのようにVISTAに入社したんですか?
杉本:僕も実は古さんから誘われて。もともと都内のカフェレストランで、バリスタとマネージャーをやりつつ、ブルワーもやっていたんです。それが忙しくてめちゃめちゃ大変で……。高校時代にアルバイトで入社してから8年くらいいた会社だったんですが、あまりのハードワークに働き続けられるか不安になっていました。長く働き続けていて転機が欲しかったこともあり、先のことは考えずに一旦仕事を辞めることに決めました。
もともとVISTAにはお客さんとして来ていましたし、古さんとはブルワー仲間としてよく飲みに行っていたので、古さんに会った時に近況報告として「仕事辞めるんですよね」という話をしたんです。そしたらちょうどVISTAも人の入れ替わりのタイミングで、後日「働かないか」って連絡をもらって。もともと働いてみたいと思っていたので、めっちゃ嬉しかったのを覚えています。

意思ある人に耳を傾けてくれるカルチャー
—— 8年働いた会社から、VISTAやBJのような働き方のかなり違う会社に来て、戸惑うことはなかったですか?
杉本:会社の仕組み的な違いはもちろんありました。でも、言い方は悪いかもしれないですが前の環境が過酷だったので、こんなにホワイトで良いの?って思っちゃいました(笑) 生活のバランスがかなり変わりましたね。前職の時は仕事にほとんどの時間をつぎ込んでいたのが、今は休みはちゃんと取れるし、仕事前とか仕事終わりに自分の時間が持てるようになって、心身ともにめっちゃ健康になったなと思います。
醍醐 :入社した時、「思ったよりすごく会社っぽいですね」みたいなこと言ってたよね。
杉本 :「しっかりした組織だな」っていうのは思いました。その中で、それぞれの役割がちゃんとしっかりあって、相談し合ってみんなで店舗や商品を作り上げていくのがすごく楽しいです。前職の時はマネージャーと言いつつ本社の意向があったりして、いわゆる中間管理職として板挟みになることも多かったんですけど、VISTAでは月に1回のミーティングで話し合って決定するというやり方で、すごく良いお店作りだなと感じています。

—— みんなで決めてみんなで責任を持ってお店を良くしていく、というのは一般の飲食店にはあまり見られない仕組みですよね。醍醐さんは2つの組織に所属していると思いますが、比較してみてどうですか?
醍醐:実は、本業の方がいわゆる「ティール組織*」と呼ばれる組織なんです。360度評価を取り入れたり、プレイヤーに裁量があってマネジメント層は相談役として機能するなど、組織体系自体はBJとかなり似ていますね。
BJも、自分から手を挙げてやりたいって言った人に対しては、耳を傾けてくれるカルチャーがあるじゃないですか。週1出社でもフルタイム出社でも、立場に差がなくて平等に意見を聞いてもらえるカルチャーはすごく良いなと思います。
*ティール組織:従来のヒエラルキー型組織とは異なり、権限が分散され、従業員が自律的に連携しながら目的達成のために意思決定を行う組織モデル
—— そのようなカルチャーを実際に感じた出来事はありますか?
醍醐:イベントを企画するときに感じることが多いです。週に1、2日しかシフトに入っていないけれど、イベントの提案を受け入れてもらえて、企画を進める中でもみんながすごく協力的。もちろんスタッフの人柄もあると思いますが、会社全体のカルチャーとして根付いているのを感じます。
本業の職業柄、いろいろな会社と関わることがあって、場合によってはクライアントの会社に一定期間常駐することもあるんです。その中で思うのは、トップダウンが強すぎる組織だと思想ややりたいことが現場に定着しにくく、組織として強い状態が持続しないことが多い。でも、BJのようなみんなで作り上げる仕組みだと、納得感もあるし持続性が高いなと思います。
—— 醍醐さんは、本業の方の会社は何年くらい働いているんですか?
醍醐:新卒で入った会社なので、10年ぐらいですね。就活の時には将来的に独立して個人で仕事をしたいという気持ちがあったので、いろんな会社や業界を見ることができる今の会社に就職しました。
—— 新卒で入った会社なんですね!杉本さんも前の会社に長く在籍されていたと思いますが、それだけ魅力があったんでしょうか。
杉本:コーヒーもクラフトビールも好きな僕にとっては、両方を扱える良い職場だったんです。ただ、マネージャー業務に加えて給与計算などのバックオフィスの業務もやっていたので、もともとやりたかったブルワー業に力を注ぎきることができなくて、もやもやも感じていました。今はブルワーの研修も受けられているし、自分の時間もしっかり取れるような働き方なので、もう一度好きだったバリスタの仕事をやりたくて最近副業を始めました。

お客さんもスタッフも世界が広がることの楽しさ
—— ふたりとも、本業と副業をどちらも楽しんでいるところが共通していますね。VISTAの具体的な仕事の中では、何が一番楽しいですか?
醍醐:僕は基本的にはサービスの仕事なので、お客さんと喋るのが楽しいですね。VISTAってカウンターが広いのでお客さんと会話をすることが多くて。いろいろな人が来てくれる分、 話の幅もあって楽しいです。
杉本:僕はやっぱり、作ったビールを目の前でお客さんが飲んでくれて、美味しいって言ってくれるのが一番嬉しいし楽しいですね。ビールの醸造作業自体は、体力仕事だし繊細な作業も多くて結構大変なんですよ。でもその大変なことが全部できあがるビールに繋がっていて、お客さんが飲んで満足しているシーンを見ることができる。醸造から提供までやっているからこその楽しさだなと思います。

—— 醍醐さんは、もともと接客業はやられていたんですか?
醍醐:大学時代にアルバイトをしていたことはありますが、VISTAはそれぶりの接客業です。リフレッシュになるだけでなく、単純に接客している時間が楽しいですね。最近は自分が好きな焼酎を絡めたイベントを企画したりしました。
—— ビアバーで焼酎のイベントというのは面白いですね!
醍醐:ビールも好きなんですが、焼酎も好きで、趣味でよく飲んでいます。生産者と繋がり、醸造や提供をしている僕らと消費者であるお客さんが直接コミュニケーションを取れて、想いやカルチャーを伝えられるのって、接客業ならではだなと思います。ここで働くことでそういう経験ができていることは、すごく豊かなことだと感じています。
—— 自分が好きなことが仕事に繋がって、お客さんにも楽しんでもらえるってすごく良い体験ですね。
醍醐:自分自身にとっても刺激になるし、イベントをきっかけにVISTAのお客さんが増えたり、お客さんが新しいカルチャーに触れるきっかけになったらいいなと思っています。日常の業務でもイベントでもそういう働きができていたら嬉しいですね。
杉本:VISTAは今、月に1回くらいのペースでコンスタントにイベントを企画しているんですが、毎月いろんな出店者の方とお会いしたり、関係者の方や近隣のお店の方がイベントに遊びに来てくれることで、自分のコミュニティがすごく広がったと感じます。イベントをきっかけに行ってみたいお店も増えたし、実際に行って「この間はイベントでお世話になりました」っていう会話をきっかけにいろんな話もできて、めちゃめちゃ楽しいです。
—— イベントによって、お客さんだけではなく、働くスタッフも新しいカルチャーに触れたり世界が広がったりしているんですね。
杉本:焼酎のイベントには普段来ない人が来てくれて、その人が別の日に「今日はビールを飲みに来たよ」って来てくれたりもしたんです。そういうのはすごく嬉しいですね。

誰かの想いを感じられる場に
—— そうやってお客さんの輪が広がっていくのはとてもいいですね!では、VISTAの業務の中でも、人生の中でも、今後チャレンジしてみたいことはありますか?
杉本:僕は、いずれは自分のレシピでビールを作りたいと思っています。そのために研修期間を一生懸命頑張っています。今は仕込みを古さんと一緒に行って、その工程にフィードバックをもらって…… 、という段階なのですが、それが終わったら今度は発酵の管理を行う予定です。少しずつできることを増やしていきたいと思っています。
—— 覚えるべきことがたくさんあるんですね……!
杉本:一つ一つの工程をできるようになるのと同時に、効率的にやることもかなり大事なので、どうやったらもっと良くできるかというのを考えながらやっています。
ブルワリーってつまりビール工場なので、今の僕の働き方でいうと、7割くらいは工場でものづくりをガンガンやって、残りの3割くらいはホールスタッフとしてサービスしていて、社内ダブルワークのような、 ちょっと特殊な働き方なんです。だからこそ自分が製造したものを目の前で飲んでもらえた時の喜びも大きい。早く自分のレシピで作ったビールを飲んでもらえるようになりたいなと思います。
—— 醍醐さんは、今後チャレンジしてみたいことなどはありますか?もともと個人で事業をやりたくて本業の会社に入ったという話もありましたが。
醍醐:起業したい気持ちは今はいったん収まっていますね。ただ、これまで仕事で得た知見を生かして、社会貢献や身の回りで困っている人の助けになるようなことはしたいと思っているし、それが実際にできるフェーズになってきているなと感じます。

—— それは、どういった場面で感じますか?
醍醐:今33歳なんですが、20代の時にいろいろな仕事を頑張ってきて、ノウハウや人との縁が溜まってきているのをいろんな場面で感じています。例えば会社では受けられないくらい小さい規模の業務を副業として個人で受けたり、知人のレストランや宿のウェブサイトのディレクションを手がけたり。でもそういうのってお金のためというよりも、人との関係性が根底にあって、ビジョンを共有している人と何かを一緒にするのが単純にすごく楽しいんですよね。VISTAの仕事も、同じ方向を向いているスタッフと一緒に作り上げていける楽しさがあるのがすごく良くて、気づけば3年も続いています。
—— 20代でいろいろ経験してきたからこそ、 できることの幅が広がっていたり、何かあった時に顔を浮かべてもらえるようになってきているということですね。
醍醐:ビジョンを共有できたり共感できる人と働いて、仕事を遊びや趣味の延長のようにすることが将来やりたいことの一つでもあったので、それがようやく叶ってきたフェーズだと感じています。次のフェーズとしては自分ができることを周りに還元していきたいなと思っていて、焼酎のイベントも、VISTAや周りのお客さんにいい影響があったらいいなと思って企画しました。
—— 自分の周辺に少しずつ還元していこうという想い、すごく良いですね。実際にイベントの企画などを始めてみて、自分のこれまでの経験が還元できているなという実感はありますか?
醍醐:少しずつ実感しています。ビールというツールを使ってお客さんとの繋がりを増やしたり、お客さんの興味を引き出したりできるということに魅力を感じているのと同時に、ビールはあくまでツールのひとつだと思っていて。焼酎を取り入れたのもそうですが、例えばビールを飲んだその先に、誰かの想いやカルチャーを感じられることが喜びだと思うんです。なので、扱っているメニューにクラフトマンシップを感じられて、お客さんはここに来ればそういうものを食べたり飲んだりして、スタッフと語り合うことができる。そういった体験自体が場としての価値だなと思いますし、そういう付加価値をVISTAで生み出していきたいですね。

—— 確かに、そういう場所って行くとワクワクしますし、店員さんが楽しそうに語ってくれるのって嬉しいですよね。
醍醐:イケてて行ったら楽しい店が自分が住んでいる街にあったら、住民としてはシンプルに嬉しいじゃないですか。
杉本:嬉しい!それに、街にとっても良い影響があると思います。僕は両国で生まれ育ったのですが、このあたりのエリアにいろんなお店が出来て、街が変わりつつあることを日々感じています。隣の蔵前、清澄白河エリアがコーヒーやお酒で盛り上がって、そのカルチャーが徐々にVISTAがある森下や両国のエリアにも浸透してきているように思います。
わざわざ訪ねてきてくれる人もいるし、新しくできたVISTAのような店が、地元の友達と集まって昔の思い出を語り合う場所になったりもする。地元にこんなにイケてる店があるんだと自慢もできますし、地元が盛り上がって活気づいていることがすごく嬉しいです!
“街のビール屋さん”として街に溶け込んでいく
—— その個性が店舗の魅力にもなっていそうですね。VISTAに来るお客さんはどういった人が多いのでしょうか。
杉本:いろいろな人が来てくれるんですが、地域の方も多いです。少しずつ街に溶け込むことができていて、“街のビール屋さん”のような存在になってきています。地域のおじいちゃんが「とりあえず生」のテンションで来てくれたり、町内会の方もよく利用してくれます。いつもの席に座って、メガジョッキでクラフトビールをグビグビ飲んで。

醍醐:クラフトビールのビアパブって、もっとビールオタクみたいな人とか、若い人がたくさん来るのかなと思っていましたが、街のコミュニティスペースのような役割も果たしているし、家族でご飯を食べに行く場所にもなっている。もちろん、クラフトビールを求めてきてくれる方もたくさんいるので、そういう方とクラフトビールの話がたくさんできることも嬉しいです。
杉本:VISTAには“Daily Delight”というブランドコンセプトがあるんですが、これには「人々の日々の小さな喜びのひとつとして生活に根付いたものを造りたい」という想いが込められています。地域の人が来てくれたり、カウンターで盛り上がっている光景を見ると、お客さんの日常の中にVISTAが存在していて、コンセプトを体現できている瞬間だなと思います。そういう光景を、これからもたくさん見たいですね。

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