「あなたは言葉を持っている人だね」「普段から使っている言葉が好きです」と、最近別の人から立て続けに言われる。自分としては人とあまり上手に話せている実感を持てておらず、テキストのSNSでもこういうことばかり書いていて、
夏至の市ヶ谷、夏至すぎる
— 石崎嵩人 | Takahito Ishizaki (@takahito1101) June 21, 2024
言葉を褒められるのは恐れ多いというか、「ぜんぜん、買い被りですよ(笑)」という気持ちの方が大きいのだけど、もし、もしも、僕が会話の中でうまく言い表すことができなかった部分や、短いテキストの外のふわふわとした部分まで含めて僕の言葉の中になにかしら良い部分を見つけてくれているのだとしたらとってもありがとう。きっとどこかで似てる部分があるから不完全な言葉を介してでも通じ合えるんだと思う。付き合いの長い、友達になりましょう。
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ちょっと前と比べて、文章が読まれなくなった時代だなと感じる。書籍や雑誌が売れないとかだけじゃなくて、ブログも、コピーも、SNSすらも。
通信速度の爆速化と可処分時間の効率化で動画優位になってるって話も実際あるんだろうし、よりリアルで、身体感覚を伴う情報伝達を求めて、文章だけの、ある意味どうにでも誤魔化せる表現が自然と敬遠されているのかな、とも思ったりする。
それでも自分たちは文章を使ったコミュニケーションからまだまだ逃れることはできないし、考えて考えて表した言葉でしか伝えられないものがあると僕は思う。
そして僕は、自分の考えを表出するためだけでなく、人と人の間に置く言葉を使っていきたい。
今の自分の仕事のひとつに“ワーディング”がある。
社内の事業のリーダーと話していて「あっ、これだ」というキーワードを引っ張って捕捉しておくこともあるし、もっと実用的に、コンセプトにしてまとめることもある。
最近だと、来月みなとみらいにオープンするコーヒーショップのコンセプトを決めた。
メンバーにヒアリングをしたのちに僕が頭を捻って効果的なものを考えてくる、というやり方ではなくて、大事にしたいことやつくりたいお店のイメージについてとにかく何度も話して、そこで出てきた言葉を、メンバーにとって自然な形で組み替える、という方法で今回はつくることにした。
具体的には、「温かいお店にしたい」「知らない人に知ってもらいたい」「人との繋がりを大事にしたい」のキーワードから、「『温かいお店』だけで言い表せるか」とか「『知ってもらいたい』のはなぜだろう」とか、「『人との繋がり』はもっと深掘りできないか」とかそういう話を重ねて、さらにぽこぽこぽこと出てきた単語を選び取って、「温度を手渡す」のコンセプトを決めた。温度を手渡すお店。やさしくて温かくて、芯のあるお店。
特別目立つものでもなければ、強く奮い立たせるようなものでもないかもしれない。でも、新店を立ち上げるメンバーにとってお守りになるようなものがいいな、と思いながらこの言葉を提案した。そのときメンバーのリアクションはというと、嬉しさと安心が混ざったような「うん、そうですよ!」といったようなものだったと思う。そうだよね!と僕も思う。もともとみんなの中にあった単語だしね。けれどそのとき、新たに生まれて意味を持った感じが確かにあった。この感触は僕にとっても嬉しいものだった。
言葉はなんのためのものだろう。
騙すためもの、責めるためのもの、嘲るためのものなど、悪意を持って使えば言葉で人を傷つけることだってできるけど、そんな場面をはっきり嫌悪して、人と通じ合うために多く使っていきたい。
言葉そのものはすごく不完全で、感情や思いを理解し合うためのいっときの依代でしかない。だからこそ、その言葉から始めて、「その先」を想像するのがとても大事。
自分以外の他人と、もっというと世の中の人々と、まだ知らぬ世界へと一緒に出掛けていくための言葉。人と人の間に言葉を置いて、そこにみんなで腰を下ろし、そこから広がる景色を見たい。