NOTES

第15期振り返り:「とにかく優しく。君がやるんだよ」

7月でBackpackers’ Japanの15期が終わって、8月から第16期がスタートした。毎年毎年期首はまあまあ忙しく、今月に入ってからは定常的なミーティングに加えて給与決定についての面談や中期経営計画の見直しなどを行なっている。

16期が始まってすぐ、代表の藤城と「(数字がいちばんキツかった時期を超えても)なんだかんだずっと大変よね」「これはもうずっと変わらないかも」と話した。2022年のはじめに「あと5年くらいは『がんばるBackpackers’ Japan』」という阿呆みたいなスローガンをつくっており、想定どおりであるとも言える。がんばろう。来年の2月には、あっという間に創業15周年を迎えることになる。

 

さて、15期を振り返ったときの大きなトピックは主に下記の2点。

・前期(正確に言うと14期下期)に引き続き宿泊飲食が好調

・宿泊飲食以外の各事業の成長

あとは組織や人事周りの小さな変化が常にちらほら。細かく見ていこう。


まずは宿泊飲食事業の好調。東京と京都にある計4軒のゲストハウス、ホステルはどれもよい数字的成果を出しながら運営を続けられている。もちろん各店細かい課題は常にあるが、大前提として売上と利益の増大が事業にとっての大きな主柱となっている。好調の理由は明確で、2022年秋頃から続くインバウンド需要である。急激なインバウンド回復と若干の供給不足、それに円安の影響も相まって東京を中心に部屋単価が高騰したのが今期だった。ただ、現在では部屋単価も稼働率も徐々に落ち着きを見せ始めている。2024年の7月は前年を割った店舗もある。部屋単価は標準値を前後し、インバウンド中心の稼働率はこれまでの揺り戻しもあると見るべきだろう。

また、15期中には「キャッシュが潤沢にあるうちに」と宿泊施設全店で中規模の設備改善を行なった。「まだなんとなかっているから」とふだんは後回しにしている部分を含めて現状の課題を洗い出すところから始め、予算を掛けて改善を実行。半年以上に渡って進めてきた。宿泊業にとって老朽化や経年劣化は定常的な課題であり大きなウィークポイントになりうる。数年経てばデザインの評価だって変化する。大きなコストがかかるのでタイミングは見極めたいところではあるが、開業後の年月(長い店では13年、短い店でも7年が経っている)を考えても必然性の高い投資だった。

 およそ6年ぶりとなるCITANの施設写真撮影を行った。

 

続いて宿泊飲食以外の事業。前回、第14期の振り返りでも触れた通り、Backpackers’ Japanには宿泊飲食以外にもいくつかの事業がある。そのすべてが2020年以降に新規事業として起こしたもので、どれもまだ成長途中にある。

焙煎事業を始めたことにより、もともとあった「BERTH COFFEE」はコーヒーブランドとしての価値をより発揮するようになった。2024年8月には、1年ほど準備を進めていた新拠点「BERTH COFFEEみなとみらい」がオープン。CITANの1階にあるBERTH COFFEE、押上にある焙煎所Haruに続く3店舗目のBERTH COFFEEである。商業ビル内のテナントという括りではあるが、BERTH COFFEEとしてはこれが初めてのコーヒーショップ単体でのオープンとなった。

席数は共用部含め4〜50席とまあまあ大きく、(これまでBackpackers’ Japanがメインで出店してきた東京城東エリアとは別の)横浜エリアでの出店ということもあり、BERTH COFFEEの新たな展開を予感させる店舗展開である。

 

「自然とともにある」を掲げるistも2024年4月に新拠点をオープンした。こちらは正確にはBackpackers’ Japanの事業ではなく、新潟県佐渡市のperch、ビアパイントとの共同事業として、「ぜひistを佐渡で」の2社からの声掛けを機に企画がスタートした。

istの1拠点目であるist - Aokinodaira Field(長野県川上村)をオープンしたのが2022年9月。istの展開は初めから望んでいたものの、Aokinodairaがまだ立ち上げ期であるし、そもそも独自で出店するには土地探しも時間がかかるし初期投資額も膨らむ。そこに声を掛けてくれたのが佐渡の2社で、15期中にも何度か佐渡島を訪れ議論を重ね、島の魅力を強く感じたことも背中を押してくれて出店を決めた。佐渡島は自然や文化だけでなく、出会う人々もとても魅力的な島で、また新たな土地と繋がりを持てているのが嬉しい。

ist - Sadoは日本海を望む岬にあり、日本海の海景や水平線とともに見渡す夕焼け、邪魔するもののない星空など、Aokinodairaとはまた違った魅力の詰まったフィールドとなった。

2022年12月にオープンした「BEER VISTA BREWERY」は自家醸造を開始した1年だった。

2023年8月に自家醸造のファーストロット、1st Batch Seriesをリリース。その後の1年で計25種類ほどのビールを醸造した。2022年12月から2023年の7月までは醸造設備と免許申請が整っておらず、ゲストビールのみを扱うビアバーとして運営していたので、ちょうどこの15期が元々の構想通りのブリューパブ(=その場で醸造したビールを飲むことのできるパブを併設したビール醸造所)として営業できた初めての年となる。店内飲食の売り上げも少しずつ増えているほか、OEMでのビールも多数製造するなどして出荷数も増加。店舗のある森下エリアを中心に取扱店も増えている。今後も製造量を上げながら販売数を伸ばしていきたい。


というわけで、宿泊以外の事業は新規出店や製造について新たなフェーズに入った1年であった。

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Backpackers’ Japanの振り返りとしてはこれで以上ではあるのだが、会社という範疇を越えてこの1年を思い出したときにひとつ気にかかることがある。

最近周りを見渡して、どうも気持ちのバランスを崩している人が多いと感じている。社内の人が社内の事情でそうなっている場合は解決する筋道を探るのがもちろん自分たちの仕事ではあるんだけど、もっと広く、世の中的な環境に起因する部分も多分にあるのではないかという予感がする。他社の人と話していても同じような感覚を持っている人が多い。

自分自身、ふと、しんどい時代だなと思うことがある。しんどすぎて「もうなにもかも虚しい」と思ったことも過去にある。SNSなんか見ていると余計にそう思う。

ポストコロナ、アフターコロナなんていうプリセットは当たり前に存在せず、日々はどんどん変化していく。まわりのスピードに振り回されないように努力するのも、自分だけが取り残されるように感じるのも、どちらも大変だ。世の中は諍い憂いとに満ちていて、将来への不安は常に付きまとう。

だからこそ、というべきか、やはり自分たちは明るい仕事の価値を信じるべきだと感じる。日本を楽しむために海を越えてやってきた人たちを優しく迎え入れる。オープンなラウンジで自由なひと時を過ごしてもらう。おいしいコーヒーやお菓子をきっかけに温かみを感じる。あるいはおいしいビールと食事をきっかけに、日常の中の喜びをつくる。いまは都市部だけでなく、八ヶ岳や佐渡には自然の中で過ごすためのフィールドもある。われわれの会社はそれがしたくて、その瞬間が好きで集まった人たちが多くいる。社会にとっては微力かもしれないけど、その力が与える影響を信じたい。

先日、しばらくうちで働いて退社するスタッフが、同じ店舗の新しいスタッフを励ます場面に立ち会った。

 

 

「最初は、一緒に働く人を元気にすること。とにかく優しく。君がやるんだよ」

これを世の中に対してもしていく会社でありたい。

みんな最初っから明るく楽しく元気なわけではない。そうしたいから、その価値を信じれるからこそできるのだ。

 

◆(わたしの)写真で振り返る第15期

小田晃生ライブ(ist - Aokinodaira)

BEER VISTA BREWERY 1st Batch Release Party

John John Festival Live(Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE)

佐渡島視察

Backpackers' Japan Fes 2023 "SCENES" メインステージ

秋のist - Aokinodaira Field

BEER VISTA BREWERY 1st Birthday Party

Lenスタッフ東京視察(ゲストハウスtoco. 縁側)

CITAN 7th Anniversary

BEER VISTA BREWERY The Shibuya Week 2024 FINDS POP出店

伊那・駒ヶ根視察

Weave 24'メインステージ

ist森歩きツアー

奈良・山添村視察(ume, yamazoe)


初夏のLen

Written by

石崎 嵩人

1985年栃木県生まれ。Backpackers' Japan取締役CBO。2010年2月にその他創業メンバーと共にBackpackers’ Japanを設立。CBOとしてコーポレートアイデンティティ設計やブランド構築、事業ごとのコンセプト立案やクリエイティブディレクションを担当。個人の活動として、出版サークル「麓(ふもと)出版」、ラジオ「ただいま発酵中」「炊き込みご飯わくわく舎」等。