INTERVIEW

「ほんとに、マジで、人生変わった」コミュニケーションが自分の軸だと気付くまで—— Each Perspective Vol.6 Len京都河原町 関本杏梨

海外にいるかのようなオープンで穏やかな空気感。和気あいあいと楽しそうに働くスタッフ。そこに上下関係はなく、それぞれがフラットな関係性で、何をやるか、どうやるかを話し合いながら運営しているという。

他の宿泊・飲食業と比べても独特な文化の源泉はどこにあるのだろうか。Backpackers' Japanで働くスタッフ一人ひとりに焦点をあてたインタビュー集 "Each Perspective"

今回は、京都・河原町のホステル「Len京都河原町」のカフェで働く関本さんに話を伺います。

関本杏梨 | Anri Sekimoto

前職の銀行を経て、2023年1月にBackpacker's Japanへ入社。現在はLenでバリスタとして勤務。鴨川へ行ってのんびりすることと、みんなで飲むビールが好き。

心地いいコミュニケーションとの出会い

—— まずは、出身地や経歴などを簡単に教えてください。

関本:京都出身の28歳です。新卒で地元の銀行に入社し、そこで約2年働いた後、2023年にLenに入社しました。

—— 銀行で働こうと思ったきっかけは?

関本:学生時代、自分が何をしたいかがずっと分からなくて、悩んでいたんです。就活中も結局やりたいことが見つからないまま、就職先の条件面だけを見て決めました。いくつか受けていた中でも一番安定的に、長期的に働けそうだと思ったので。

—— なるほど。いわゆる土日休みで、育休があって、みたいなことですよね。

関本:はい。もともと母親が専業主婦で、父親がバリバリ仕事を頑張っている家庭で育ったのもあって、父が子育てや家事にあまり協力的ではなくて。専業主婦の大変さを間近で見ていた分、自分自身が働き続けたいという考えが自然と強くなっていきました。やりたいことが特別あるわけでもなかったので、なら安定的に働ける方がいいなって。

—— 銀行ではどんなお仕事をされていたんですか?

関本:事務や営業を担当していたので、投資信託やクレジットカードを売ったり、保険の案内をしたりしながら、自分に割り振られた作業をひたすらこなす日々でしたね。お客さんは銀行に手続きをしに来ていて、早く帰りたいはずなのに、行員は営業をしないといけない。そういう接客スタイルに、違和感を感じながら日々を過ごしていました。

—— そこからどのようにLenを知ったんですか?

関本:1年目でちょうど転職を考えはじめた頃に、お客さんとしてLenに来ました。当時いたスタッフがすごく気持ちの良い接客をしてくれて。フラットでナチュラルに接してくれるスタッフばかりで、「こういうコミュニケーションをお客さんと取りたい!」と感じました。

—— それからすぐに転職を?

関本:しばらく転職するかどうかを悩んだ末、2年経つぐらいで銀行を退職しました。半年ほどいろんなところを旅行していたのですが、その時すでにLenを受けることは決めていました。休み中にもし他の人に採用が決まっていたり、面接に落ちたりしたらまた考えようって思って。
金髪にしていた髪も面接のために黒染めして、志望動機も頭の中にたたき込んだのに、面接してくれたスタッフからは「堅すぎて採用するか迷った。金髪やったら一発で合格やったのに!」と後日言われて(笑) 自然体でよかったんだなって思いました。

体育会系の組織から、フラットな組織へ

—— 元々お客さんとして来ていたと思うのですが、Lenに入って改めて感じたことはありますか?

関本:入ってみて最初に思ったのは、みんなすごく対等。社歴とか年齢とか関係なく人と人とが自然体に接している感じで、「こんなフラットな組織があるんだ」とびっくりしました。お客さんも、Lenのスタッフとしてではなく、「杏梨ちゃん」と名前で呼んで接してくれるので、居心地がすごくよかった。

あとは、Co-M(Backpackers’ Japan独自の組織制度)という制度上、スタッフにほとんどの意思決定権が委ねられているのも、良い意味でギャップでした。現場で決めていい範囲が大きいからこそ、みんな意思をもって主体的に働いているし、働く環境そのものへの愛もすごく大きい。「なんて良い会社なんだ」とびっくりしましたね。

—— 逆にギャップが大きすぎて馴染めない、みたいなことはなかったですか?

関本:なかったですね。銀行にいた時も、現場で感じたことをすぐに反映できた方がもっと良くなるのにな、と思っていたので。まさにそれを体現している会社だと思いました。だからめちゃくちゃしんどかったみたいなことはあんまりなくて。ずっと楽しい。

強いていうなら、数字の部分は少し苦労しました。現場のスタッフが主体的に物事を決めるって、裁量がある分責任も大きい。日毎の売上や原価を数値で細かく追っていくことが求められるのですが、自分には苦手意識があって。長い目で見るとすごく大事だということは理解しつつも、大変さを実感した部分でもありました。

—— そうだったんですね。今はカフェで働いていると思いますが、入社時もバリスタを志望して入ったんですか?

関本:はい。未経験でカフェセクションを志望して、今もバリスタをしています。スペシャルティコーヒーについての知識はなかったのですが、入社前に自分が心地いいと感じたコミュニケーションを取ってくれたのがLenのカフェスタッフだったので、バリスタになりたいと思いました。

バリスタは技術職なので、まずはクオリティを提供レベルまで上げて、それをさらに維持するのがとっても大変です。でも、だからこそ日々やりがいを感じています。そして、当時のトレーナーが私が楽しいと思えるように教えてくれたんだろうなと今は思います。そのトレーナーはもう10年ぐらいバリスタをしている人で「Lenはいわゆる『コーヒー屋さん』じゃなくて、旅人やいろんな人が来るところだから、杏梨みたいにコーヒーを飲みはじめたばかりの人の感覚がすごく貴重で、杏梨がどう感じるのかを僕は知りたい」といわれたのがすごく印象的で。その一言で、自分の意見を恐れずに伝えていいんだと思えて、救われたのを覚えています。

—— 良い先輩ですね...!バリスタ業務以外にも何か担っている役割はありますか?

関本Lenで取り扱っているコーヒーは、自社で焙煎しているBERTH COFFEと、3ヶ月周期で変わっていくゲストロースターとがあります。ゲストロースターには、Lenで扱っている期間中にゲストバリスタとして来ていただいて、カッピングやトークイベントも開催しています。その一連の流れとして、ロースターの選定やイベントの企画・運営を現在は担っています。

—— すごくやりがいのありそうな仕事ですね!

関本来ていただいたロースターから、「Lenのイベントは他のイベントに比べてゆったりしていて、お客さんとコミュニケーションをしっかりと取れるのが楽しい」と言っていただけて。お客さんからしても、好きなロースターがコーヒーを淹れてる姿を間近で見れて、話ができるってなかなかないと思うので、みんな幸せそうな顔をしてくれます。来てよかったとお客さんに言っていただけるのが、何より嬉しいですね。今後は、トークセッションを記事として公開して、よりいろんな人にロースターの情報を届けられるような仕組みを作っていけたら良いなと思っています。

—— 毎回ゲストロースターのイベントはすごく盛り上がっていますもんね。今はそれが一番のやりがいですか?

関本ゲストロースターの仕事ももちろんやりがいがあるんですけど、やっぱり普段の営業が何よりも大事というか、軸になってるものだなと思います。

私自身何がしたいのかがわからないところから社会人生活が始まって、自分に合わない環境でしんどい思いもしたからこそ、Lenで働く時間は本当に楽しくて。日々営業しながら「やっぱり楽しいな」「今日も営業できてよかったな」と心から思います。

目指すべき場所を体現できる存在に

—— 日々働く中で大事にしていることや心掛けていることはありますか?

関本私は、コーヒーにすごく詳しいわけでも、技術がめちゃくちゃ高いわけでもないので、良いコミュニケーションや温かい空気感を作ることを意識して働いています。ここ数年でスタッフの入れ替わりがあったり、店舗が忙しくなっていったりする中で、Lenにとって何が大事で、何を優先すべきかを、一緒に働くスタッフとたくさん話しました。今までは先輩たちが居たからついていけばよかったけど、店舗の中で世代が変わっていくにつれて、自分たちが大事にしたいものや、すべきことを考えるタイミングが多くなったと思います。

私が最初に良いなと感じた人と人とのコミュニケーションとか、一言二言でもいいから相手に興味を持って会話をして、お客さんが嬉しそうにバイバイって手を振ってくれるような景色を、Lenから失くしたくないなと思っています。

「See you again と思える場所」(Lenのゲストバリュー)という目指すべき姿を、先輩たちが言語化して残してくれて、体現しようとしているところを見てきたから、自分たちもそれを受け継げるようにがんばらなきゃと思っています。日々の営業で悩んだり判断に迷うタイミングってたくさんあって、そういう時に「『See you again』に立ち返れば全部決めれるはずだよ」って言ってくださった先輩の言葉を思い返しています。

—— いい先輩に囲まれていたことが伝わります。他にも、働く上で同僚や先輩から刺激をもらったエピソードはありますか?

関本:それで言うと、去年の夏にCITANという東京の系列店に研修に行ったんです。Lenは東京にあるNui.やCITANとは離れているので、Lenという店舗単体で考えてしまうことが多くて。一歩外に出ると世界が広がるし、会える人の幅も広がることを実感しました。何より、CITANのスタッフがめちゃくちゃかっこよかった。リラックスしつつ、気を抜きすぎないというか。昔Lenの先輩から言われた「バリスタは外から見られる仕事だから、仕草とか作業台の綺麗さとかにも気を使ってかっこよくいてね」という言葉をもう一度思い出させてくれた気がします。

—— エクスチェンジに行く前と後で、自分の中で何か変化はありましたか?

関本CITANのみんなが、私のお客さんとのコミュニケーションを褒めてくれて。そこで自分が大事にしたいと思ってることを、大事にできていることを実感しました。やっぱりお客さんとの距離感とか、コミュニケーションを働く中で一番大切にしたいんだと気づいてからは、より意識して日々の接客をするようになったし、どんなに忙しくてもお客さんのことを優先して考えるようになりました。

コーヒーについても、CITANのみんなとカッピングをする中で、自分の意見をフラットに聞いてもらえて共感してもらえたことは自信になりました。それまでは自分の感覚にあんまり自信が持てなかったんですけど、少しずつスキルもついてきてるんだなと思えて。

「この景色めっちゃいいな」を共有できるチーム

—— 今のLenは、どんなチームですか?

関本:普通はスタッフが入れ替わるとチームの雰囲気や考え方も変わっていくと思うんですけど、Lenで大事にしたいことを変わらず大事にしつつ、働けているなと思います。先輩たちがいたときみたいな、誰かが引っ張るチームではないけど、みんなで進んでいっている感じ。日々の営業の中で起こる「この景色めっちゃいいな」という感覚が、自然と新しく入ったメンバーにも伝わっているのかなと思います。

—— そういう、具体的な業務内容以外の話もスタッフ間でよくしますか?

関本:嬉しかったこととか、ゲストと仲良くなったこととか、そういう話は私からもめっちゃしますね。あの人はこういう人で、これが好きなんだってことを、始めはただ自分が嬉しくて周りに喋ってるだけだったんですけど、最近は他のメンバーがそういう話をしてくれることも増えてきて。そういう話をしているときがすごく嬉しいです。

—— 杏里さんが大切にしていることが自然とチームにも伝わっているんですね。

関本そうですね。私も元々人見知りなので、最初は喋らないと、と意識しながらコミュニケーションを取っていましたが、今は「喋りたい」と思ってコミュニケーションを取っています。どんな人なんだろう、どこから来たんだろうって、素直に気になって聞くようになったので、自分でも変化を実感しています。

Lenで先輩たちが作っている景色に憧れて、自分も頑張って喋ろうとしているうちに、ちょっと仲良くなれたゲストが増えたりして。その積み重ねで、自分が心地いいと思うコミュニケーションを見つけられたんだなと思います。ほんとに、マジで、人生変わったなって思います。

いつかLenのスタッフじゃなくなっても、別の場所でここで教わったことを体現したいと思います。「これがやりたいんや」「これが好きなんや」って今は自信を持って思えているので。

 

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企画 / 編集

宮村友海

前職の旅行系広告代理店を退職後、2019年暮れにBackpackers’ Japan入社。Len京都河原町でのレセプション・バーテンダー勤務を経て、現在は企画・PRとして従事。住んだことがある場所は山口、北海道、京都。好きなものは太陽と流れる川と酒場。

編集

浜田慧佳

新卒でデザイン会社の広報を務め、2020年春にBackpackers’ Japanに入社。Nui. HOSTEL & BAR LOUNGEで飲食を担当する傍ら、全社人事業務を担う。現在、広島県尾道市に移住しArbor Onomichiの立ち上げに携わる。

撮影

高山奈々子

理系大学での学びを背景に、数値的な観点からSNS分析やマーケティングに取り組んできた。これまでは個人事業主として働きながら、BERTH COFFEEみなとみらいでバリスタとして現場に立つ。この春からは全社の人事領域にも関わり、現在はBackpackers’ Japanを軸にバリスタ業務と人事業務に取り組んでいる。