INTERVIEW

やりたいことを、素直に楽しんでやってみる —— Each Perspective Vol.5 CITAN 岡本美咲

海外にいるかのようなオープンで穏やかな空気感。和気あいあいと楽しそうに働くスタッフ。そこに上下関係はなく、それぞれがフラットな関係性で、何をやるか、どうやるかを話し合いながら運営しているという。

他の宿泊・飲食業と比べても独特な文化の源泉はどこにあるのだろうか。Backpackers' Japanで働くスタッフ一人ひとりに焦点をあてたインタビュー集 "Each Perspective"

今回は、東京・馬喰町のホステル「CITAN」のレセプションで働く岡本さんに話を伺います。

岡本美咲 | Misaki Okamoto

前職のPR会社とコーヒー商社を経て、2023年12月にBackpackers’ Japanへ入社。現在はCITANでレセプションとして勤務。コーヒーとワインが好きで、週末は鎌倉の朝ご飯屋「EENY」でも働きながら“好き”を広げ続けている。

 

えいやっと飛び込んだ思い出の場所

—— まず最初に、自己紹介を踏まえてこれまでの経歴を簡単に教えてもらえますか?

岡本:岡本美咲です。愛知県名古屋市出身で、大学までは名古屋に住んでいました。新卒でPR会社に入るときに上京して、その後少しだけコーヒー豆の商社で働いてから、CITANに入社しました。CITANでは、レセプションとメンテナンスのシフトに入っています。入社して1年10ヶ月ですね。入ってから今まで、あっという間でした。


—— キャリアとしては、PR会社からスタートしたんですね。

岡本:最初は広告に興味があって、関西エリアで広告会社を探してたんです。でも説明会に参加しているなかでPRの仕事に出会って、面白そうだなと思ったのがきっかけですね。ただ、PR会社って関西より東京に多いイメージがあったので、結局は東京に拠点を移すことにしました。

PR会社の時は何十社か担当があって、各社の広報活動についてコンサルのようなことをしていました。担当の方や社長にヒアリングをして、そこから広報計画を立てつつプレスリリースやメディアキャラバン * のアドバイスなどをするのが主な仕事でした。他の会社のことを知れるし、企業の広報の方と一緒に仕事ができるのはすごく面白かったです。

*メディアキャラバン:広報担当者が、新聞、テレビ、Webメディアなどの報道機関を直接訪問し、自社の新商品やサービスなどの情報を伝えるための広報活動

—— そこから転職を決めたのには、どういった理由があったのでしょう?

岡本:次に入社するコーヒーの商社と出会ったことも理由の1つですが、単純に忙しすぎたのも大きいですね。夫にも、「自分の時間も大事にできて、楽しいって思える仕事がもっとあるはずだよ」と言われ続けていて。そのタイミングでコーヒー豆の商社との出会いがあり、転職を決めました。元々コーヒーがすごく好きで、いつかはコーヒー業界に携わりたいとずっと思っていたんです。

—— コーヒー豆の商社では、どういった仕事をされていたんですか?

岡本:営業に近い仕事をしていました。ロースターさんにお声掛けをして、農園さんから届いた豆を紹介しながらテイスティングしてもらうカッピング会を開催し、購入する豆を決めてもらうのが主な業務でした。1つの農園さんで大体20種類ぐらいの豆があるので、「今年は雨が多かったので味わいがこうで」とか、そういう説明をして。

—— プロであるロースターさんと豆の味わいについて話すんですね!専門性も必要だし、責任のある仕事ですね。

岡本そうなんですよ。いくらコーヒー好きといっても、畑の標高が違ったり精製方法が違ったりすることで生まれる細かい味わいを、絶対に自分より詳しい人たちに説明しないといけないので、いつも緊張していました。それに、商社で働く前から知っているような有名なロースターさんもたくさん来てくださるので、そういう緊張もあって。

元々コーヒーが大好きだったので、コーヒーの商社に入社できて、緊張はするけど毎日充実していたしすごく楽しかったです。ただ、会社側のいろんな理由で入社から4、5ヶ月ほどで退職しないといけなくなってしまって……。その時は大失恋したような気持ちでした。

—— それは……つらかったですね……!

岡本:その後CITANに入社したんですが、入った後も、前職の終わり方が唐突だっただけにやりきった感がなく、ちょっとモヤっとしてて。実はその後、商社の方から戻ってきてほしいと言われたことがあって、かなり迷いました。でも夫に、「CITANで働いてる方が毎日楽しそうだよ」って言われたんですよ。「一緒に働いてる人たちとも合ってそうだし、同じ想いの人も多いし、毎日楽しそう。働いてて楽しい姿を見ている方がいい」って。そう言われて自分の環境を振り返ってみると、たしかにめっちゃ楽しいし、入社して半年ほどが経ってようやく独り立ちができるようなタイミングで、CITANの中でもやりたいことがたくさん生まれてきていたので、そのまま残ることに決めました。


—— PR会社からコーヒーの商社、飲食宿泊業のCITANと、その時々で興味があることを仕事にされてきたんですね。Backpackers' Japanのことは、どのように知ったんですか?

岡本:BJ(Backpackers' Japanの略称)の存在も教えてくれたのも、実は夫なんです。付き合って最初の誕生日旅行がLen(『Len京都河原町』。Backpackers’ Japanが運営するホステル)だったんですよ。当時のスタッフさんが、ケーキにローソクを挿して歌いながらお祝いしてくれて、バーにいた他のゲストもおめでとうって言ってくれて。それが初ゲストハウスだったんですけど、その時の楽しい記憶がめちゃくちゃ残っていて、Lenの系列が東京にあるから行こうということで泊まりに来たのが、CITANとの出会いでした。そのあと応募するときも、東京に暮らし続けるんだったらCITANがいいなと思って選びました。実は、PR会社にいる頃から気になっていて何度も求人情報を見ていたので、コーヒーの商社で働けなくなった時に「今かも!」と思って、緊張しながら応募しましたね。

—— 旦那さんに人生変えられてる……!コーヒーに関わる仕事もしていたと思いますが、CITANに入るときにはバリスタではなく宿の仕事で応募したんですね。

岡本:コーヒーが好きで、バリスタ並みに飲んでる自信があるんですけど、実際にエスプレッソマシーンを触ったことは1回もなかったんです。バリスタって大変な仕事だしすごく尊敬してるので、そんなに簡単にトライできないなと思っていて。あとは、将来的に夫と一緒に宿をやりたいという夢があるので、ひとまず宿について知るためにレセプションをやってみようと思って入社しました。

スタッフみんなで一緒に店舗を作っていく

—— 入ってみて、BJはどうでしたか?

岡本:正直めっちゃ最高。自分にめちゃくちゃ合ってるなって思います。言い方がちょっと変なんですけど、働いてる感じがあんまりしないっていうか。PR会社時代は、数字に追われて睡眠時間は3、4時間みたいな生活で、時間がもったいなくてご飯も食べなかったりしていたんですよ。そんな環境でずっと働いていたから、「仕事の喜びとは一体何?」みたいな感じだったんですよね。

でもBJは、まかないも美味しいし、ゲストとの会話もめっちゃ楽しくて。 あとは、何かをしたいと思ったら、自分で企画を出して、それをやり通せるところもすごく良いなと思っています。もちろん独りよがりじゃだめだし、店舗のメンバーに相談したり意見をもらったりはしますけど。一般的な会社だと、トップが決めたことに従って与えられた数字に向かっていくような働き方が多いと思うんですけど、BJは店舗をみんなで一緒に作っている感じがいいですね。

—— 「みんなで作っている感じ」って、いいですね。

岡本:みんなが自分の店舗や組織を良くするために働いてるから、やっていて楽しいですね。入社当初は「自分でやるってなったら仕事が増えるな」みたいなイメージだったんですけど、スタッフは誰も仕事が増えるみたいな意識がないんです。やらなきゃいけない、やりたいからやる、という意識で働いているスタッフを見て、びっくりしたし、「やばい。頑張らなきゃ」と感化されました。PR会社の頃は、組織体制的に言われたことをやることしかできなかったので。こんなことも自分で決めてやっていいんだ、という驚きはありましたね。

BJって、必要であればある程度の備品は自分の判断で買えるじゃないですか。PR会社の頃は、文房具一つ買うのも経理の人にお願いして、それでもなかなか買ってくれないようなこともあって。何をやるにも承認を取らないといけなくて、それが大変だからプラスアルファのことをするのはやめようという思考になっていっちゃう。でもBJは、自分がやりたいって思ったら責任を持って最後までやってねという感じなので、それがすごくいいなと思います。

—— 逆にCITANに入って、ネガティブギャップみたいなものはありましたか?

岡本:ネガティブギャップですか……あんまりない気がする。シャワーの排水溝とか、こんなところまで毎日しっかり隅々まで掃除をするんだなという驚きはありましたが(笑) あとはもともと想像してた通りだったかなあ。

日常生活の延長にある仕事の時間

—— 今働いているのは、CITANだけですか?

岡本:鎌倉にあるEENYという飲食店で、週に1回働いています。将来は自分の宿でモーニングもやりたくて、CITANとは別に朝ごはん屋さんを探している時にEENYに出会いました。実は、EENYを運営しているWHWという会社のデザインチームに、結婚式の時のウェルカムボードをお願いしたことがあったんです。その会社が飲食店、しかも朝ごはんのお店を始めると聞いて、運命を感じてオープニングスタッフとして入社しました。EENYで働いているのは週に1回だけなんですけど、そっちもめっちゃ楽しい。人気店なので、本当に忙しいときは朝から締めまでぶっ通しなこともあって大変ではありますが。元々は朝ごはんを作りたいと思って入りましたが、週1の出勤頻度だとなかなか朝ご飯は作れなくて、ドリンクメイクをしています。朝ごはんの調理はできていないけど、人脈作りだったり、別の分野で経験を積めればいいなと思って働いています。

—— 2つの仕事を並行するのは大変ではないですか?それを超える楽しさがあるのでしょうか。

岡本:そうですね。物理的にはCITANの休みが月8日あって、そのうち4日はEENYで働いてるのでほぼ週1休みなんですけど、そんなに負担は感じていません。CITANで働く時間はやっぱり働いている感覚がないというか、仕事の時間が日常生活の延長みたいな感じになってるので、全然苦じゃないです。

—— 仕事とプライベートをはっきり分けたいという人も多いと思いますが、「仕事の時間が日常の延長」というのはおもしろいですね。

岡本:言葉にしにくいんですが、CITANで働いている自分が日常の自分と切り離されていないというか、いつもの暮らしの延長線上にCITANの仕事の時間があるような感じがしています。

働く時間を考えても、朝のシフトだと、1日の仕事が終わって16時に退勤したら、どこにでも行けちゃう。逆に夜のシフトだと15時くらいまでは自由時間があるし。生活スケジュールが日によって違っても全然苦じゃないタイプなので、みんなで飲みに行きたい日は朝のシフトとか、もちろん他のメンバーとの兼ね合いはあるけど、そういう融通が利くのも良いですね。

メンテナンスは疲れるけど、終わった後に下に降りればすぐにみんなとビールを飲めるっていうのも最高です。働いている時間とそうではない時間が緩やかに繋がっているのも、働きやすさに繋がっているのかもしれません。

—— 仕事終わりの1杯、最高ですね……!今のCITANの仕事の中で何をしている時が1番楽しいですか?

岡本:全部楽しいんですけど、変化が目に見えてわかるので、新しいことを企画したり作ったりしている時が楽しいですね。最近でいうと、館内全体の大規模設備改善を行うプロジェクトがあったんですけど、客室を改装してゲストの滞在体験をより良く改善できることはやりがいがありました。あとは、新しいスタッフのトレーニングをして、「1人でここまでできてるのはすごいな。頑張ってるな」と思う瞬間は嬉しいです。そう考えると、設備改善もトレーニングも、スタッフみんなといろんなことを作り上げられてる時間が、今1番楽しいかもしれないですね。

これまでの繋がりをこれからの未来に

—— 将来的には「宿を作りたい」という想いがあると思いますが、CITANの中で、次はこれをやってみたいなということはありますか?

岡本:バリスタをちょっとやってみたい。いや、やったことないことをやってみたい、という方が正しいかもしれないです。例えば商社の時のいろんな繋がりを使って、地方のロースターさんをお呼びしてイベントができたら楽しそうだなとか。業務としてバリスタに集中することは難しそうだけど、これまでの繋がりをCITANやBERTH COFFEE(CITAN1階カフェの名称、Backpackers’ Japanが運営するコーヒーショップ)に繋げていくことはできるし、そういう手伝いだったらしていきたいです。もちろんレセプションでも、まだやりたいことはたくさんあるんですけど。

—— やりたいことがどんどん溢れてきていますね!これまでのキャリアで培ってきたことを活かせるし、美咲さんだからできる仕事のように思います。

岡本:コーヒー業界がもっと盛り上がったらいいなっていう想いもあるし、最近カフェが本当に忙しそうなのに、レセプションに自分がいるときに何も助けてあげられないもどかしさもあって。バリスタの仕事を手伝えたり、繋がりを広げたりする存在だったら、自分もなれるかもしれないなって思っています。そういう経験は、自分の宿づくりにも活きると思いますし。

—— 素敵ですね。そういえば、そもそもどうして宿をやりたいと思ったんですか?

岡本:一番最初のきっかけは、何度も登場している夫なんです。付き合い始めた当時、彼はゲストハウスでアルバイトをしていました。「いろいろな文化や人と触れ合えるから、将来は好きな空間を作って、飲食をしたりイベントをしたり、いろんなことができるゲストハウスをやりたい」と言っていて。でも私はゲストハウスに泊まったことがなかったので、まずはLenに連れて行ってもらいました。「俺が一番好きなところに連れて行く」って言ってくれて。さっきも話したようにそれがめっちゃ楽しくて、「宿を作るのっていいな、じゃあ、私もそれに参戦する」っていう気持ちになったことが大きいです。最初はゲストハウスの存在自体も知らなかったけど、夫がプレゼンしてくれてそれに影響を受けて、いつか2人で一緒に作り上げられたらいいねってなっていったんですよね。作り話みたいで話すのが恥ずかしいんですけど……。

—— え!!めっちゃいい話だ!!!

岡本:自分たちの場所を作って、お客さんだけじゃなくていろんな繋がりのある人たちに来てもらって、そこでコーヒーを淹れてもらったり、料理を作ってもらったり、作品展示をしたりできたら楽しそうだなっていう、ほんとに安直な話なんです。

—— 今CITANで挑戦してみたいことと、しっかり繋がっていますね!

岡本:そうですね。ゲストハウスって、行く側はめっちゃ楽しいけど、働く側はどうなんだろうって思っていたんですよ。でもCITANに入って、「働く側もめっちゃ楽しいじゃん!」って。

下のラウンジでゲストと会って一緒に飲んだりとか、廊下ですれ違ったゲストと喋ったりとか。そういうのが楽しくて、やめられないです。だから、将来的に自分の宿を作りたいっていう夢はあるんですけど、今はCITANが楽しいから、目の前のことを楽しみたいっていう思いが強いですね。

—— 働いているのを見ていても、本当に楽しそうですもんね。これからも楽しんで働いて、その楽しさをスタッフにもゲストにも伝播させていってください。みさきさんが作る宿も楽しみです!今日はありがとうございました。

岡本:ほんとに毎日めっちゃ楽しいです。想像以上に楽しい。
こちらこそ、ありがとうございました!

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企画 / 編集

宮村 友海

前職の旅行系広告代理店を退職後、2019年暮れにBackpackers’ Japan入社。Len京都河原町でのレセプション・バーテンダー勤務を経て、現在は企画・PRとして従事。住んだことがある場所は山口、北海道、京都。好きなものは太陽と流れる川と酒場。

撮影

河野奈々子

BERTH COFFEEみなとみらいのバリスタ。東京理科大学で経営学を学び、個人事業主として数値分析やマーケティングを行う。その中でSNS運用を通して写真を撮り始め、今もカフェの日常や人との時間を記録している。