友達だった我々は、

(2016.09.14)

Backpackers’ Japanは役員・正社員13名 準社員9名 アルバイト30余名から成る株式会社である(2016年9月現在)。2010年の2月に創業し、東京と京都で計三店舗のゲストハウスを運営。現在は東日本橋で四号店となる店舗の準備をしている。

 

創業メンバーは代表の本間君、Nui.(二号店)マネージャーの琢也君、運営統括のミヤちゃん、そしてこの記事を書いている僕の計四人。

僕と本間君は大学の同級生。ミヤも僕たちと同じ大学で、四年の時に学内のイベントで知り合った。琢也君と本間君はオーストラリアで出会い、それをきっかけに琢也君が僕たちの大学まで遊びに来てくれて知り合った。みんな言ってみれば友達である。

 

昨晩、本間君と琢也君と僕の三人で飲もうということになった(除け者にしたわけじゃないけど、ミヤには後で怒られた)。頻繁にではないが、たまにこの三人で酒を飲むことがある。

 

東日本橋の現場近くの気楽な居酒屋で飲み始まり、それぞれの店舗や四号店や将来のことを話した。

真面目な話ばかりしてももう別に恥ずかしくない癖に、時々みんなわざらしく冗談を持ち込んだり、それぞれの話しぶりをからかったりして話が進む。それでも結局大体は、会社やスタッフのことばかりを話している。

 

そこそこの酒を飲み、ひとしきり話をし終わって「せっかく近いから、少し現場の様子を見ていこう」という話になった。

現場の扉を開けて地下に降りる。バーカウンターとキッチンカウンターの広さを視認できるようにするため、床に場ミリがしてある。

 

テープで区画されたカウンターの中に立ってみると地下のスケール感が分かる。

思ってたよりも広く感じないね、とか、シッティング(座り席)の割合はこれぐらいがよさそうだね、とか。

 

そうしてるうちに本間君がiPadで音楽を流しはじめる。

「今度の工事ではデザインと一緒に、曲でもイメージを伝えたい。こんな曲が似合う場所にしたい。」そんな思いの元、本間君はプレイリストをすでに組んでいた。

 

音楽を聞いて僕と琢也君が反応する。

 

「かっこいいね」

「そしたらこれもオススメ」

 

「うん、いいね。こんな曲はどう?」

 

結局iPadを囲んでみんなで曲を流し合った。放課後の教室のようである。

 

 

僕たち四人が会社を辞めて集まった頃「友達とやったってうまく行くわけがない。絶対失敗する」と色んな人に言われ続けた。具体的には、当時勤めていた会社の上司や、家族や、先輩に。

 

経験したことがある人なら分かると思うと思うけど年上の人に言われる「絶対に失敗する」はかなり重い。なにせ「絶対に」である。希望が一つもない。実際に、そう言って来た人達が友達と起業しようとして失敗したことがあるのかどうかは知らない。知らないけど、何も言葉が返せないのである。

 

そういえばあの言葉の意味は「友達とではない方が事業はうまく行く」なのか、それとも「友達とうまく行かなくなる(結果事業が成り立たなくなる)」なのか、一体どっちだったのだろう。こうして後から冷静に振り返ってみると、どちらもなんだか説得力に欠けている気がする。

 

成功失敗に関しては何とも言えないが、昨夜の様子を思うとどうやら僕たちは変わらず友達でいれているようではある。

そしてそれは、色んな運や、それぞれの胆力に、ちゃんと感謝すべきことなんだろうと思う。事業がうまくいくかどうかに関わらず、関係が崩れるきっかけなら、確かにいっぱいあったから。

 

他の人達と比較することはできないが、今のところの僕は、自分たちのベースが友達で良かったなと思っている。けれど同時に、この三人でも、他の社員でもスタッフでも、例え元々が友達であっても既に会社なしでは関係が存在しなくなっているなとも思う。

たぶん、そういうものなのだろう。友達だった僕らは、数年かけて、友達でなくてもいいもので繋がれるようになった。寂しくはないし、むしろ少し心強い。

 

昨日それぞれが掛けた曲。八年前、あれほど三人で違った音楽の好みが今はちょっと似通っていた。それが僕には嬉しかった。

 

 

fullsizerender-3

 

 

 

(文:石崎嵩人)